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 国税庁はこのほど、2025年度に国税局査察部(マルサ)が強制調査で摘発した脱税事件が82件、脱税額が総額84億円だったことを公表しました。税務調査には、納税者の同意に基づく任意調査と、有無を言わさず実施される強制調査があります。この強制調査を担当するのが、税務調査官の中でもエリートが集うとされる査察部、通称「マルサ」です。通常の調査とはまったく異なる権限と捜査ノウハウを持つマルサの実態とはいかなるものか。
 税務調査は、マルサ以外の国税局や税務署が行う「任意調査」と、マルサの「強制調査」に分けられます。任意調査は、適正な課税を行うために必要な資料を収集するために行われ、質問検査権という権限に基づいて行われる行政手続きの一種です。
 一方、強制調査は、悪質な脱税者に対して実施され、その目的は検察官に告発して刑事訴追を求める点が大きく異なります。脱税者を明らかにし、証明するための証拠収集を行う強制調査は、形式的には行政手続きではありますが、その実質は、刑事手続きに近く、裁判官から許可令状を得て、強制的に現場に踏み込み、必要とあらば身体検査令状も用いて、女性検察官が女性の下着の中まで捜査することも許される熾烈なものです。
 かつては任意調査と強制調査は根拠法も別でしたが、2017年度税制改正で、強制調査を規定していた国税犯則取締法は廃止され、任意調査と同じ国税通則法に統合されました。
 マルサのターゲットになるのは「国税に関する犯則事件」(国税通則法131条)です。ここでいう「犯則」所得とは、一般的な税務調査で仮装・隠ぺい行為があった場合に課される重加算税の対象となる所得に近いですが、この中には意図的に行った期ズレや科目仮装などは含まれません。つまり帳簿外取引や架空経費計上など、簿外資金が生じる所得を言います。
 マルサでは、この簿外資金を「タマリ」と呼び、非常に重視します。なぜかというと、マルサの税務調査は犯罪調査となるので、刑事が行う犯罪捜査同様に、脱税をした証拠が必須だからです。加えて、プールしたお金があれば、そのお金を差し押さえて脱税した金額を確実に納税させることができます。そのため、マルサはタマリがあることを調査に着手するうえでの重要な基準としています。
 そしてタマリは現金や預貯金で隠されているケースが最も多いです。物置内の金庫、室内に置かれたスーツケースなど、手元に置かれることもありますが、火災や盗難を避けるため、「貸金庫」に隠される場合も多いです。
 不正所得が1億円を超えるとマルサに狙われるといわれていますが、これは根も葉もない噂です。あくまでマルサが狙うのはタマリを伴う犯則所得のみであるのでタマリのない不正所得は考慮されません。
 現場では、通常の税務調査で2千万円以上の不正所得があれば、マルサに情報提供し、検討結果により調査をマルサに引き継いでいます。
 近年のマルサの重点事案として掲げているのが「消費税」です。特に消費税の仕入税額控除や輸出免税制度を悪用した不正還付請求に対しては目を光らせています。25年には不正還付請求案件を23件告発しています。具体的には、架空の金地金取引により課税売上割合を偽装した法人や、虚偽の工事請負契約書を作成して課税仕入を過大に計上した業者などが、マルサに告発されています。
 査察調査を経て検察へ告発された納税者は、検察官捜査を経て、裁判所に起訴されるかが判断されます。25年度では、マルサが調査に入ったうち、64.6%が告発され、一審での有罪判決割合は100%です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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